先ず身近なアルカリ乾電池から学んでいこう!
二次電池の前に一次電池の代表格であるアルカリ乾電池に触れておこう。正式にはアルカリマンガン電池と言われている。以前はマンガン電池が主流であったが、より寿命が長く、価格差も小さくなったアルカリ電池が主流となってきた。
具体的な構造、内部での化学反応式を図18に示した。前節で触れたように、プラス極活物質¹⁾、セパレーター、電解液+マイナス極活物質、回路として導線、負荷(ランプ)、スイッチというのが基本構成である。具体的にはプラス極活物質には二酸化マンガンMnO₂と黒鉛の粉末¹⁾、マイナス極活物質は粉末の亜鉛Znと電解液である水酸化カリウムKOHと水H₂Oが混ぜられて合剤となりペースト状にされたものが詰められている²⁾。マンガン電池の両極活物質と同じ材料であるのに、マンガン電池の電解液が弱酸性の塩化亜鉛であるのに対して水酸化カリウムに水という電解液は強アルカリ性を示すため、アルカリマンガン電池、もしくはアルカリ電池と呼ばれるようになった。
化学反応式を図18に示したよように、下記にようになる:
❏負極での化学反応式(酸化反応):
Zn+2OH⁻ ➡ZnO+H2O+2e⁻
❏正極での化学反応式(還元反応):
2MnO2+H2O+2e⁻ ➡Mn₂O3+2OH⁻(㊟参照図18の⊕側は誤記:2Mn₂O₃→Mn₂O₃)
スイッチをONにすると、水酸化物イオンOH⁻がプラス極からセパレーターを通してマイナス極に移動して亜鉛Znと酸化反応(共有結合)して酸化亜鉛ZnOと水と自由電子e⁻を生成する。その自由電子がスイッチがONされた回路を通過してプラス極に入る。二酸化マンガンMnO₂とセパレーターにしみこませた電解液の水H₂Oが還元反応して、酸化マンガンMn₂O₃と水酸化物イオンOH⁻を生成する。
そしてこの反応が繰り返されることで、自由電子e⁻が連続的に移動する。そして、化学反応が進めば、活物質である二酸化マンガン、亜鉛の量が減少してある期間を過ぎると必要な電圧が確保できなくなり、電池切れという状態に陥る。これが一次電池の宿命というわけである。
出典☛「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P68 より加筆
アルカリ電池は初期電圧は1.6Vであるが、公称電圧³⁾は1.5Vとなる。マイナス極に粉末の亜鉛を使用しているため⁴⁾、マンガン電池より亜鉛の表面積が大きく、大電流を持続させることが出来るという特徴がある。@2021.9.30記、2021.10.11修正
《専門用語の解説および参考文献》
1)活物質☛化学変化を起こしてエネルギーを放出し、電池反応を起こして外部に電気エネルギーとして取り出すことができる物質。電極に保持させたもの、あるいは連続的に電極に補給するものがある。後者は燃料電池と呼ばれる。負極に使われるものを負極活物質、正極に使われるものを正極活物質という。@E&M JOBS
2)アルカリマンガン乾電池@Wikipedia
3)公称電圧☛電池を通常の状態で使用した場合に得られる端子間の電圧の目安として定められている値である。新しい(あるいは満充電に近い)電池では、公称電圧より高い端子電圧(初期電圧)が得られるが、放電が進んだ場合や、負荷に大きな電流を供給する場合には、公称電圧より低い端子電圧となる。@Wikipedia
4)マンガン電池はマイナス極活物質の亜鉛が管状に外側に設置された構造で、さほど表面積を大きく取れない。@「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P66