さて、どんな種類の化学電池があるのだろうか?
電池と言えば、誰でもすぐ思い浮かぶのは乾電池、スマホ、PCのリチウムイオン電池。今や日常生活には欠かせないものの一つとなっている。だが、構造、作動は誰でも知っているという訳ではない。
ここでは先ず電池の種類について触れておこう。電池と言えば多くの場合、前節でも話したように、両極材、電解液、セパレーターを組み合わせて化学反応を起こして電気を作り出す化学電池のことを言う。1800年頃、ボルタ伯爵により生まれたボルタの電池に始まり、200年の時を経て現代では非常に多くの電池が日常生活のあちこちで必需品として使われている。
図16に示したように、電池には充電できない使い切りのタイプの一次電池と充電して繰り返し使える二次電池がある。節1-7の酸化還元反応で言えば、負極から正極への酸化還元反応だけ出来る(放電)のが一次電池であり、正負極の双方向での酸化還元反応が出来る(充放電)のが二次電池ということが出来る。
一次電池はボルタの電池に始まり、マンガン電池、アルカリ電池などがある。また二次電池にはクルマで必需品となっている、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、そして電動車用の主役であるリチウムイオン電池などがある。
化学電池は電解液を使用するため、取り扱いが難しくなっている。そこで、電解液を不織布染み込ませたりなどするため、乾電池といわれているが、完全に乾燥しているわけではない。1885年に日本人の屋井先蔵が世界初の乾電池を発明したのだが、今では乾電池と言えば、一次電池にのみ使われている¹⁾。
また、この電池のはなしで扱わないが、燃料電池も水素と空気中の酸素との化学反応によって、水素燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換する、化学電池に分類される。一方、太陽光電池は光が電気現象を引き起こす光電効果²⁾による光起電力³⁾を利用しているため、物理電池に分類されている。
出典☛「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P63 より加筆
化学電池の基本構成とは?
では化学電池の基本構成はどうなっているのであろうか?これまで正極、負極、電解液、セパレーター、そして両極と結線された負荷が一般構成であることを述べてきた。図17に示された電池の中で、リチウムイオン電池の構成を例に挙げて示したのが、図18となる。各要素の特徴・役割を下記にまとめた:
➊正極材☛電子を獲得し易い材料:電位が高い
➋負極材☛金属イオン化して電子を放出し易い材料:電位が低い
➌電解液(電解質)☛イオンが移動し易い水溶液・・・イオンが溶け込んだ物質
➍セパレーター
1)二次電池の正極と負極を隔離☛
電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材。
2)正極と負極を分離させて自由電子の短絡を防ぐ
多くの化学電池は、図18のLiBと同じように構成されていると考えてよい。@2021.10.11記
《専門用語の解説および参考文献》
1)「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P62
2)光電効果☛金属に光を当てると電子が飛び出す現象のこと。この場合は、マイナスの電極に電子を放出する現象のこと。
3)光起電力☛金属に光を当てると半導体内部に大きな電位差が生じて、上記の光電効果が発生する。この時の起電力を光起電力と呼んでいる。