電流と電圧が行う仕事(エネルギー量)☛電力と電力量
ここからはこれまで話してきた電流と電圧が行う仕事について触れることにする。節1-1の冒頭で、電気とはエネルギーの形態の一つであることに触れた。そのエネルギー量を示してくれるのが、これから話す電力と電力量である。順を追って説明していこう。
ニュートン力学において、物体を1Nの力で1m移動させた時の仕事を1ジュール(J)といい、仕事、エネルギーの単位として用いられる¹⁾。例えば1㎏の物体を保持する力は9.8Nであるから、この物体を静かに1m持ち上げる仕事は、9.8N✖1m=9.8(Nm)=9.8Jとなる。
また仕事はどれだけの速さでするのかが重要な場合が多い。この時、単位時間に対する仕事の割合を仕事率(power)といい、1秒間に1ジュールの仕事をするときの仕事率を1ワット(W)という。実は自由電子が行う仕事率、つまり電力の単位にも、このワット(W)が使われ、家電製品にも表示されている。したがって、電力とは一定時間の間に出来る仕事量のことで、仕事率を意味する:
❏電力(W)=電力(ジュール/秒)=電力(Nm/秒)
単位の話は面白くもなく、眠たくなる一方なので事例で説明したい。
図8にその事例を示した。100Wと60Wの白熱電球では、100Wの方が明るい。電力が大きいということは電気エネルギーを光エネルギーに変換できる量も大きいということだ。これから電池を学ぶわけだが、よく使われる単位がkW(キロワット)だ。単位kWはクルマの出力にも使われている。以前クルマの出力単位は馬力(PS)が主流であったが、最近はkW表示に変わった。つまり、ニュートン力学で言う出力も電気でいう電力も同じ仕事率の概念、単位なのである。図9に出力37kWの軽自動車は368個の100W白熱電球の出力に相当することを示している。電力を少し身近に感じてもらえただろうか?
1ワットの定義式からわかるように、電力に時間を掛ければ、実際行った自由電子の仕事量になる。電気の世界では、これを電力量といい単位はニュートン力学と同じジュール(J)である:
❏電力量(J)=電力(W)✖時間(秒)=電力(ジュール/秒)✖時間(秒)
といった具合である。ただし、電気の世界では単位はジュールよりも、ワット秒(Ws)、もしくはワット時(Wh)が多く使われている。また、電力会社の請求書などではキロワット時(kWh)が使われる。クルマの電力量の単位も使われるのが、キロワット時(kWh)である。@2021.9.24記
出典☛「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P28 より加筆
出典☛「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P29 より加筆
《専門用語の解説および参考文献》
1)例えば、「力学」戸田盛和@岩波書店;P66