いつも原点に戻ってしまう電流の正体?
私みたいな機械屋はいつも「一体電流って何だろう?」という素朴な疑問に立ち返ってしまうことが多い。結局は分かったような言葉で自分を納得させるしかないかもしれない。ここでは、ここでは皆さんと一緒に納得できるレベルまで落とし込んでみたい。先ず我々が日常軽く使われる「電気¹⁾」という言葉がある。専門的には、「電気とはエネルギー形態の一つ²⁾」ということらしい。確かに電気エネルギーという言葉も使われる。では電気が流れる時、電流という言葉も使う。その電流の正体は何だろうか?
難解な量子力学の世界に入ることなく、やはり簡単に理解しておきたい(結局はあるモデルで妥協。ただし、EVを理解するには十分)。物質の性質を保つ最小単位は原子で、原子核(陽子+中性子)とその周りをある軌道上を回っている電子で構成されている。これら陽子、中性子、電子は物質を構成する最小単位で素粒子と呼ばれている。
ここでもう一つ、電気的な性質である「電荷」という言葉が登場する。電荷が持つ電気の量はそのまま電気量といい、単位にクーロン(記号C)を用いる³⁾。陽子の電荷はプラス(+)、電子の電荷はマイナス(-)、中性子の電荷はゼロということだ。プラスの電荷同志、マイナスの電荷同志は反発し合い、プラスの電荷とマイナスの電荷は引き合うというクーロン力⁴⁾が存在する。原子の電荷がゼロの場合、原子核の陽子数が増えれば増えるほど、同じ数だけ電子数も増えていくということで原子番号が増えていく。ただし、原子全体の性質は変わるが、電気的には中性な状態が保たれている⁵⁾。そこへ原子の外部から突然エネルギーの刺激が加わると、最も外側の軌道を回っていた電子が軌道を外れて飛び出すことがある。この飛び出した電子は自由電子と呼ばれる。実はこの自由電子が移動することにより、電流が生じると考えられている。
電流は自由電子の流れ!
ではどうやって電流が存在するのか?こう考えると分かり易い。図3にマンガ図を示した。原子の電荷がプラスになった物質と原子の電荷がマイナスになった物質があるとする。ここで、この二つの物質を導体⁶⁾(導線)でつなぐとする。すると、クーロン力の影響でマイナスになった物質の自由電子が導体を通ってプラス側に引き寄せられていく。引き寄せられた自由電子はプラスの物質に引き寄せられ中性となる。これが連続的に行われることにより、プラスの物質は中性となり、また自由電子を吐き出したマイナスの物資も中性となる。この時、導体(導線)を通る自由電子の流れが電流と言われるものである⁷⁾。実際には図3右に示したように、マイナスの物質から出された自由電子が導体内の電子をプラスの物質側へ移動させている。@2021.9.11記
出典:「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P12 より加筆
《専門用語の解説および参考文献》
1)電気(でんき、英: electricity)☛電荷の移動や相互作用によって発生するさまざまな物理現象の総称である。これには、雷、静電気といった日常的な現象の他、電磁場や電磁誘導といった電気工学に応用されている現象も含まれる。雷は最も劇的な電気現象の一つである。電気がエネルギー源として応用可能な範囲は広く、交通機関の動力源、空気調和、照明など、多様な用途がある。また、電気工学は電子工学へと発展し、電気通信、コンピュータなどが開発され、広く普及している。@Wikipedia
2)「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P8
3)「物理図録」@数研出版;P84
4)クーロン力☛静電気力とも呼ばれ、真空中でr [m]離れた2つの点電荷q₁ [C]、q₂ [C]の間に働く力を表す。クーロン力Fには、「2つの電荷(電気量)の積q₁q₂に比例し、点電荷の間の距離rの2乗に反比例する」という関係がある:F∝q₁q₂/r²
5)太陽系のような重力場では、惑星は最後には太陽に飲み込まれてしまうが、量子の世界では全く異なる。たとえば、プラスの原子核にマイナスの電子は決してくっつくことはない。また、外側の軌道を回っている電子はマイマス同士で反発はするが、ある規則性のもと外周に整然と並び、外部からの刺激がなければ、決して軌道を外れることが無い。そして、そして原子核内の陽子もプラス同士であるが、反発することなく中性子と共にくっついて共存している。重力場とは異なる、量子場の世界は私には不思議に思える。
6)導体☛自由電子の移動が容易い物質。たとえば銅原子(原子番号29)は、補図に示したように原子核外側の軌道に2個(K殻)+8個(L殻)+18個(M殻)+1個(N殻)=29個の電子が周回している。28個まではある規則に則り整然と並んで回るが、最も外側の電子は1個であり、外部から刺激を受けると自由電子になりやすい。銅原子では原子核+28個電子の周りを1個の自由電子が動き回っているのである。したがって、電子の移動が容易い。これが導体の正体である。
出典:「電気の基本としくみがよくわかる本」福田務@ナツメ社;P15 より加筆
7)いつも話題になるのが、電流の向きである。電流は図1で触れたボルタの電池で有名な伊ボルタ伯爵が1800年頃電子よりも先に発見したもので、その当時はプラスからマイナスに流れていると定義した。その100年後の1897年に英トンプソンが電子を発見されて、電流とは電子が移動することだと考えられるようになった。結果的には電子の移動方向と電流の方向は逆になってしまったということらしい。