「さて午前中に話をしたTank-to-Wheel効率の考え方を基にGV、HVの効率モデルを考えてみよう。GVの効率モデルは図3-7で説明したようであるが、今では正味熱効率は40%まで上がって来ているので、エンジン正味熱効率を15~40%と幅を広げ、算術平均値を取って27.5%とした。すると、GVの効率ηT2(GV)は
ηT2(GV)=(0.15+0.40)/2×0.80=0.275×0.80=0.22(22%)
となる。しかしこれでも燃料タンク給油したガソリン量の1/5しか、走行に使われないということを言っている。確かにクルマというものは効率は良くないね。
一方、HVの効率モデルは、図3-8にように簡単化した。」
出典☛「電気自動車が一番わかる」石川憲二@技術評論社;p25 より加筆
「これまで3つのHV方式を説明してきたよね。どのHVも次の3つの走行ケースで説明できたよね:
1)EV走行、2)ハイブリッド(EV+エンジン)走行、3)エンジン走行
そこで、HVは2つの運転パターン、つまり
➊ガソリンエンジン走行、➋シリーズHV走行
にて、ある割合でクルマが走行していると考えた。実際には複雑な制御をしているし、制動時・坂道などのエネルギー回生制御もしている。しかし、議論を進める中で複雑なモデルを扱うと直感的に非常に分かり難い。また、実際には違った走行パターンでもこの2つのパターンに置き換えても、燃費・効率議論には差し支えないと考えた。」
「なるほど、分かりやすいね。HVの専門家には不満かもしれないけれど、僕には分かりやすいモデルだ。」
「ここで、ガソリンエンジン走行時の効率をη1、シリーズHVによる走行時の効率をη2と表すことにした。まず効率η1は運転割合をA(%)とすると、、
ガソリンエンジン走行時のTank-to-Wheel効率η1=0.22×A(%)/100
となる。一方、シリーズHV走行時の運転割合をB(%)とする。また、この時のエンジン効率は最大の40%で発電しているものとする。さらに、モーター効率は90~98%程度変動するが、小さ目に90%と仮定した。すると、効率η2は次のようになる:
シリーズHV走行時のTank-to-Wheel効率η2=0.40×0.90×B(%)/100=0.36×B(%)/100
したがって、HVのTank-to-Wheel効率ηT2(HV)は、次のようになる:
❏ηT2(HV)=η1+η2=0.22×A(%)/100+0.36×B(%)/100;ただし、A+B=100」
「エンジン運転割合Aが増えれば燃費は悪くなる方向に、エンジン発電割合Bが増えれば燃費は良くなる方向にいくということだね。」
「その通りだね。」
「でもどうやって、割合A、Bを求めるの?」
「それには実際の燃費データを使うことにする。一般ユーザー情報を集めたである実燃費データで、e燃費²³⁾と呼ばれている。」
ここからは、話が長くなりそうで、また明日話をすることにした。@2018.12.13記、2019.7.26、2019.12.15修正
《参考文献および専門用語の解説》
23)e燃費サイト☛いわゆるクルマの燃料管理・情報コミュニティ・サイトのこと。全国60万人を超えるユーザーから寄せられたデータを共有・比較分析することで、車種別実燃費データや実ガソリン価格の情報など、いわゆる“Big Deta”が得られる。そして、毎年3月初めに前年の投稿データによるe燃費アワードがGV、HV、軽自動車など部門別で発表される。今どのクルマの実燃費がいいのか、どのクルマの実燃費はカタログ燃費(モード燃費)の何割程度なのか、が分かる。興味深いサイトによる燃費(km/L)情報。@例えば知恵蔵miniの解説@2014.1.29